①亜硫酸(二酸化硫黄)について
ワインには酸化を防ぐ目的で、亜硫酸が添加される。亜硫酸自体が酸素を吸収する還元剤としての特性があるが、亜硫酸がラッカーゼやチロシナーゼといった酸化酵素を阻害する効果が重要である。皮をむいたリンゴがすぐに茶色くなるのは、ラッカーゼが参加を促進するためで、破砕されたブドウもこうした酸化酵素を多く含む為、亜硫酸を加えないと、すぐに果汁が褐変してしまう。これに加えて、亜硫酸には静菌作用がある。酵母や細菌は一定の濃度以上の亜硫酸があると蔵相くできない。
亜硫酸は、ワインの中では以下の4つの形態をとる。
㋐ガスの状態、
㋑ワイン中に溶けたイオンの状態、
㋒ワイン中で糖などと結合した状態、
㋓ワイン中でアセトアルデヒドと結合した状態。
㋐~㋓の比率は、ワインのpHにより変化する。
㋐+㋑+㋒+㋓を総亜硫酸(トータル亜硫酸)と呼ぶ。食品衛生法で規制されているのは、総亜硫酸の濃度である。
㋐はガスの状態でワインに溶けており、非常に殺菌力が高い。
㋐+㋑を遊離亜硫酸(フリー亜硫酸)と呼び、酒質の管理に重要な指標となる。
㋒+㋓を結合亜硫酸と呼ぶ。
㋒は温度変化により、結合状態から遊離状態に映ることがあるが、㋓は非常に強い結合なので遊離しない。つまりアセトアルデヒドの多いワイン中では、亜硫酸の効力は低下することになる。
②酵母
ブドウの中に含まれる糖分(ブドウ糖、果糖など)は、公募により、エタノールと二酸化炭素に分解される。アルコール発酵に用いられる酵母はSaccharomyces cerevisiaeに分類される。ブドウは高濃度の糖を含み、豊富な酸を有するため、ワイン用の酵母は高い糖濃度と低いpHに体制を持つことが必要である。ワイン醸造では、粉砕したブドウの果皮に付着している酵母でアルコール発酵が行うことが出来るが、こうした酵母の中から優秀な酵母を選抜し、フリーズドライで乾燥状態にした培養酵母(cultured yeast 仏 levure de culture)が利用できる。培養酵母は、乾燥酵母(dry yeast 仏 levure sèche)と呼ばれることもある。こういった酵母を自然界から選抜する基準は、ブドウがもつアロマを遊離する酵素を多く持つものや、野生酵母を殺すキラー活性っを持っているもの、などがある。キラー活性とは、ほかの酵母を殺す能力のことで、ワインの発酵の際にほかの酵母が増殖するのを防ぐ。培養酵母を添加せずに、ブドウの果皮についている酵母や、醸造所の環境中にいる酵母(仏 levure indigène、土着の酵母)で発酵させる場合もある。ブドウの栽培の段階で殺菌剤を多用すると、有害なカビだけでなく、ブドウの果皮に付着している酵母の菌数も減るため、この場合は栽培管理から注意を払う必要がある。
③乳酸菌
赤ワインの発酵を④で述べるように、ブドウに含まれるリンゴ酸は、乳酸菌により乳酸と炭酸ガスの分類される(マロラクティック発酵)。この発酵を行う乳酸菌として代表的なものは、Oenococcus oeniで、1995年までは旧分類の名称、Leuconostoc oenosと呼ばれていた。乳酸菌は嫌気性のバクテリアで、酸素が多い環境下では増殖しない。タンクや樽でマロラクティック発酵を行うときは、酸素に触れないように密閉容器で、空寸のない状態で、温度を20℃以上に保つ必要がある。
乳酸菌は空気中に浮遊しており、ワイン中で自然に増殖してくるが、酸の高い果汁やワインでは、乳酸菌が増殖しにくいため、白ワインの場合には、乾燥乳酸菌を加える方が、速やかにマロラクティック発酵が進行する。フリーズドライの乾燥乳酸菌が市販されており、利用することができる。
④マロラクティック発酵(仏 Fermentation Malolactique=FML)(Malo-lactic fermentation=MFL)
果汁やワイン中に含まれるリンゴ酸(Malic acid)が、乳酸菌の働きによってにゅさん(Lactic acid)と炭酸ガスに分解される発酵。副生成物として、ヨーグルトなどの乳製品系の香りを持つダイヤアセチルを生じる。リンゴ酸は分子構造から明らかなように、酸味に関する水素イオンを生ずる-COOH(カルボキシル基)を2つ含む二塩基酸であるが、乳酸はカルボキシル基を一つ有する一塩基酸である。
この変化によって、
1.ワインの酸味は柔らげられ、まろやかになり
2.ダイアセチルなどの香りにより複雑性を増し、芳醇な香味を形成し、
3.リンゴ酸がなくなることで、瓶詰め後の微生物学的な安定性が向上する。
マロラクティック発酵は、アルコール発酵後に行う場合が多いが、現在では果汁の段階で、乳酸菌をアルコール発酵用の酵母と同時に添加し、アルコール発酵とマロラクティック発酵を平行して行うことも広く行われるようになってきている(仏 co-inoculation)。
⑤澱引き Scoutirage=Racking
発酵が終わったばかりのワインは、浮遊物によって濁っている。これらの浮遊物が沈殿したものを澱(仏 lie)と呼ぶ。澱はブドウ果汁由来のペクチン、ポリフェノール、酒石、タンパク質、さらに酵母菌体などの混合物である。澱は沈殿するので、これを取り除くため上澄みを別の容器へ移し替える。この操作を澱引きといい、タンクや樽での貯蔵・育成中に数回行う。
⑥清澄化 Collage=Fining
さらにワインを透明にするために、必要に大路手清澄剤を使用する。伝統的に使用されている清澄剤は卵の白身、Tannic acid、Gelatine、Bentoniteなどで、しばしば2つ以上を組み合わせて使うこともある。清澄剤は電荷をもっており、ワイン中の濁り成分が、清澄剤の電荷とひきつけあい、かたまりを形成して沈殿する。
⑦濾過 Filtrage=Filtration
瓶詰め Embouteillage=Bottling
瓶詰めに先立って、清澄化を行ったタンクや樽からワインを移動し、珪藻土濾過器やシート濾過器を用いて濾過を行う。また最終の濾過にミクロフィルターを採用する場合もある。樽やタンク貯蔵中に、澱引きを行って十分な透明度が得られている場合は、濾過をせずに瓶詰めをすることもある。早飲みタイプのワインは瓶詰め後すぐ出荷するが、熟成タイプのワインは貯蔵庫に寝かせ、さらに熟成(瓶塾)を続ける。長期間の熟成をする場合は、瓶詰め後にラベルを貼らない状態(瓶詰め半製品、仏 Tirè-bouchè)で、瓶熟をすることが多い。
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