ステンレスタンク
白ワイン、赤ワインとも、ステンレスタンクでの醸造が多くなっている。
白ワインの場合は、酵素に触れる面積を減らすため、縦長の形状をしたタンクを使うことが多い。
赤ワインの場合は、果帽が駅に浸りやすいように寸胴型が適している。
ワインは酸が強いので、酸に強いスペックのステンレスが使われる。
鉄製のタンクは酸に弱いので、ワインと触れる部分がコーティングされている。
金属製のタンクは、熱伝導性が良いので温度管理が容易、殺菌がしやすく衛生管理が容易、ワインの酸で腐食しにくいといったメリットがある。
コンクリート・タンク(仏 cuves à vin en betonキューブ・ア・ヴァン・アン・ベトン)
コンクリート・タンクはコンクリートでタンクをつくったものである。
木桶と同様、保水性が良く、木桶よりも内部の殺菌や清掃がしやすい。
従来は、建物の一部として設置されていたが、最近では独立型の直方体のタンクや、木桶と同じ形状の円錐型、卵の形など様々な形状がある。
木桶
赤ワインの発酵の際に、木桶を使うことがある。発酵の際は上部の蓋を外し、開放状態にしてブドウを投入する。
材料はオーク材が多く、保温性に優れており、高級な赤ワインの仕込みに使われる。
木桶の上部から、先端に円盤のついた棒で、ピジャージュにより果帽を液中に押し込む。
容量の大きい木桶の場合は、人力では押し込むことが出来ないため、油圧式のシリンダーに接続したシャフトを使うこともある。容量が大きい場合は、ルモンタージュと併用することが多い。
オーク樽
a.樽育成(仏 Elevage en tonneau)
発酵を終えたワインをオーク樽に移し替え、セラーで1~2年間育成(エルヴァージュ)させる。
樽の中で、ワインを育成することにより、樽材からのタンニン分の溶出によりワインの濁り成分を沈殿させやすくし、木目からの穏やかな酸素の流入により、ワインの味わいをまろやかな味ワインに変えていく。
この間、ワインは樽の木材に吸収されたり、木目を通して蒸発するため、目減り分の補填(仏 Ouillage)を定期的に行う。
[樽育成の主な効果]
・木目を通しての穏やかな酸素との接触
・樽からの成分抽出(タンニンやココナッツ香など)
・清澄化の促進
・フェノール成分の重合による沈殿
・風味の複雑化
b.樽発酵(仏 Fermentation en tonneau、Barrel fermentation)
樽の中に果汁を入れて発酵させる工程を、樽発酵と呼ぶ。
樽の中で発酵が終わった後は、そのまま樽で育成する。
c.オークの種類
樽材としてオーク材が用いられることが多く、フランス産、スロヴェニア産、アメリカ産、ロシア産などがある。
オークには多くの種類があり、いずれもケルカス属に分類されるケルカス属のうち、ワインに用いられる主なものは、ヨーロッパにはせセシル・オーク(学名 Quercus petraea)、ペドンキュラータ・オーク(学名 Quercus robur)の2種が自生しており、フランスのTronçais、Allier、Limousin、Vosgesが有名である。
一つの地域の樽材のみを使った樽もあるが、通常は上記の地域の樽板を、一定の割合でミックスしたものが多い。
北アメリカのオークは、ヨーロッパとは種が違い、アメリカン・ホワイトオーク(学名 Quercus Alba)が自生している。
ヨーロッパのオークは、タンニンが多め、ヴァニラ香(物質はヴァニリン)やココナッツ香(物質はオークラクトン)が控えめ。
アメリカのオークは、タンニンが少なめ、ヴァニラ香やココナッツ香が強めという特徴がある。
d.樽材の自然乾燥(仏 séchage 英 seasoning)
森から切り出されたオーク材は、水分を多く含み、収斂味のあるタンニン分や樹液を含む為、屋外に置き2~3年間自然乾燥させる。この期間に、雨や日光、気温の変化などにより、余分な成分の一部が分解し、ヴァニラ香やココナッツ香が増える。この工程をシーズニングと呼び、どういった地域でシーズニングを行うかで、樽がもつ味わいに違いが生まれる。屋外で人工的に散水しながら乾燥させる場合もある。
e.樽のトーストにより抽出される主な香り
樽のトーストの熱により、樽に含まれるリグニンが分解され、ヴァニラ香をもつヴァニリンなどが生じる。
樽の内部のトーストの程度によって、Light toast、Medium toast、Heavy toastなどのように呼ばれる。
トーストの度合いが軽いほど、ワインは樽材に浸み込みやすく、樽材からのタンニン抽出が多くなる。
トーストの度合いが強いと、樽の内部が焦げることでワインが浸み込みにくくなり、樽からのタンニン抽出は少なくなり、煙、コーヒー、カラメルなどのロースト香が強くなる。
[オークチップの使用に関する動き]
2006年10月11日付のEU規則No.1507/2006で、EU域内でのワイン生産に、オークチップの使用が認められた。一方、オーク樽を用いて醸造したワインについては、指定の表記または加盟各国が制定するこれにそれに相当する表記を使用することが出来るようになった。
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