日本酒のラベルなどで時々見かける特撰、上撰、佳撰という表現。じつはこれには明確な基準はありません。
これらの表現は、「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」などの特定名称酒に区分されない普通酒に使用されることが多いようです。
1975年(昭和50年)、日本酒造組合中央会の「清酒の表示に関する基準」で製造方法による表示区分が実施され、現在の特定名称酒にあたる、吟醸酒や純米酒、本醸造酒などの呼称を冠した商品が市販されるようになり、次第に酒質も多様化してきました。その中でも、普通酒の消費は多く、普段使いの日常の酒としてたしなまれ、現在市場に出ている普通酒は、じつに全体の7割程度のシェアを占めています。
かつての級別制度は、国税局での審査により「特級」「一級」「二級」の等級が認定され、区分ごとの税率が課されていました。
専門家などで構成された酒類審議会が日本酒の官能審査を行い、アルコール度数や酒質により、品質の高いものから順に特級、一級、二級と区分していたのです。
級別制度が廃止された1992年4月1日以降、造り方の違いや官能検査(きき酒)による判定をふまえながら、目安として旧・特級クラスの酒を「特撰」、旧・一級クラスの酒を「上撰」、旧・二級クラスの酒を「佳撰」として位置づけています。
「特撰」「上撰」「佳撰」という区分は、かつての級別制度のように明確な基準はなく、ラベルへの記載義務もありません。消費者が買い求めるときに選択しやすいよう、蔵元がそれぞれ独自に決めているようです。
級別制度の廃止にともない、「大吟醸」や「吟醸」「純米酒」「本醸造」といった特定名称による新しい基準が登場しますが、これらは精米歩合や製法による区分であり、単純に品質をランクづけしたものではありません。
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