ワイン概論 ー赤ワインの醸造法ー

ワイン

①選果(仏 Triage des raisinsトリアージュ・デ・レザン)


収穫されたブドウを、ワイナリーに搬入した後、粉砕の前に選果することが多くなっている。
選果は、選果台(仏 Table de triage des raisinsターブル・ド・トリアージュ・デ・レザン)の上でブドウが移動する間に、望ましくないブドウを取り除く。房の状態で行うものと、除梗して粒の状態で行うことがある。後者は、状態の悪い粒を除くことだけでなく、除梗の際に折れて混入した果梗を除くことも大きな目的である。

②粉砕 Foulageフーラージュ・除梗 Égrappageエグラパージュ

黒ブドウを、果梗を取り除き(除梗)、つぶす(破砕)工程、酸化防止と、好ましくない野生酵母や酢酸菌などの殺菌のため二酸化硫黄(亜硫酸)を加える。
カベルネ・ソーヴィニョンやメルロなどのボルドー品種は、果梗に青臭い匂い(イソブチル・メトキシピラジン、IBMP)を多く含むため、粒の状態での選果をするなどして、完全に取り除くことが望ましい。
これに対し、ピノ・ノワールは、果梗にあまり青臭い匂いを含まないため、果梗を一部残したり、完全に残すなどして、果醪と一緒に発酵することが多い。

③主発酵 Fermentation alcoolique

フェルマンタシオン・アルコリック除梗・破砕したブドウの果汁、果皮、果肉、種子(場合によっては果梗も)の混合物である果醪( 仏Moûtムー=Mustマスト)を木桶やタンク(セメント製、ステンレス・スティール製、コーティングされた鉄製)に入れ、酵母を加えるか、ブドウや醸造所に付着した酵母により発酵が始まるのを待つ。
補糖(Chaptalisationシャプタリザシオン)されることがあるが、地域、収穫年により制限がある。主発酵(アルコール発酵)が始まると、果醪中の糖分は酵母によって代謝され、アルコール(エタノール)と二酸化炭素(炭酸ガス)に分解される。発酵温度は30℃前後。
原料部殿糖分が低い場合には、生成ワインのアルコール分が低く、微生物に対して不安定になるとともに、風味が単調になる。そこで果醪の段階で補糖を行うことがある。添加された糖分はアルコール(エタノール)に変換されるので、補糖の目的はワインに甘味を付けるためではなく、あくまでもワインのアルコール分を高めることにある。

シャプタリザシオン(補糖)は科学者でナポレオン1世統治下の内務大臣であるJean Antoine Chaptaジャン・アントワーヌ・シャプタルlに由来。彼は補糖量と生成するアルコール度数に関する研究を行い、1801年に補糖に関する理論を含んだワイン醸造の本を出版した。

④醸し Macérationマセラシオン


発酵が始まると、果皮から赤い色素のアントシアニンと渋味の主成分であるタンニンが溶出する。
種子の表面には油脂分がついているため、アルコールが上がり、10%程度になると、種子表面の油脂分がアルコールに溶けるため、種子からのタンニン分の溶出が始まる。
果皮、果肉、種子を果醪に漬け込む工程を「醸し」という。
ブドウの熟度が足りないと種子に含まれるタンニン分の収斂味が強いため、ブドウの熟度に合わせて、醸し期間の調整を行う。
完熟したブドウから、熟成タイプのワインを造るときは、醸しの期間を長くし、早飲みタイプのワインや熟度の足りないブドウからワインを造るときは、醸しの期間を短くする。この間、発酵で生じた二酸化炭素の力により、果皮や果肉が果醪上部に浮上し果帽(仏 Chapeau de marcシャポー・ド・マール)を形成する。果帽部分の温度調整、果帽中に残存する色素や糖分などの成分抽出、果醪中の酵母に酸素を供給するなどのために、発酵タンクの下から発酵中の果醪液を抜いて、タンク上部に浮上している果帽全体に液が掛かるように散布する作業(仏 RemontageルモンタージュPumping overポンピング・オーバー)を行う。
【ルモンタージュの効果】
・果醪液への酸素供給
・糖分、酵母、温度を平均化
・果皮・種子からフェノール類その他の成分抽出
発酵タンクの容量が小さい場合は、ルモンタージュを行わずに、人力による楷つき(仏 Pigergeピジャージュを同じ目的のため行うワイナリーも多い。人力でのピジャージュは大容量のタンクでは限りがあるので、近年は油圧式のピジャージュ装置も開発されている。

⑤圧搾(仏 Pressurageプレスラージュ)

アルコール発酵及び加茂市の期間が終わったら、タンクの下部からワインを抜き取る。
ワイン自身の重さと、果帽の重みにより引き抜かれるワインをフリーラン・ワイン(仏 Vin de goutteヴァン・ド・ゲット)と呼ぶ。
後に残った果皮、種子を圧搾機に移動し、圧搾する。
この際に得られるワインをプレス・ワイン(仏 Vin de presseヴァン・ド・プレス)と呼ぶ。
プレス・ワインは圧搾の圧力の程度によりいくつかの区分に分けられ、低圧で搾られた区分で、タンニンが豊富で果実味のあるものは、フリーラン・ワインとブレンドされ、高圧で搾られた収斂味が強く果実味の少ない部分は、一ランク下のワインにブレンドされることが多い。
圧搾機の構造としては、筒状の本体の中で、風船状の袋が膨らんで、壁面に押し付ける圧力で圧搾するバルーン型圧搾機(仏 Press pneumatiqueプレス・プヌマティック)が増えている。

コメント