ブドウの生育と環境
ブドウの生育サイクルと作業(北半球)
ブドウは、つる性の多年性植物であり、生育地の気候に合わせた生育サイクルを持っており、一般的に気温が10℃程度になると地上樹部の活動が始まります。
休眠ー萌芽ー展葉ー開花ー結実ー着色ー成熟ー収穫というサイクルを形成しています。
栽培に関する条件
①気温
年平均気温10℃~20℃(ワイン用ブドウ栽培では10℃~16℃が最適)
成熟期は一日の温度較差がある方が良いとされ、果実は熟すに従い品種固有の果色や風味を表します。また一年のうちでは四季があり、暑い季節と寒い季節が訪れる「気温のサイクル」があることが望ましく、北半球では、北緯30度から50度、南半球でも南緯30度から50度の地域にほとんどのブドウ生産地が含まれています。また気温は畑の標高とも関連し、暑い地域では標高の高い土地にブドウ畑を展開することでこれを補正しています。
②日照
植物の生育には光合成が必須で、最低限の日照量と気温が必要です。
ブドウの生育は萌芽、展葉、開花、結実、着色、成熟と進行するが、充分なブドウ成熟に必要な生育期間の日照時間は1,000時間から1,500時間です。日照の強さと日照時間の観点からは北向きよりも南向きの斜面に位置するブドウ畑の方が有利であります(北半球)。
③水分
ブドウ樹は、ブドウの樹体が成長する栄養生長の時期を得て、子孫(果実)を残すための生殖生長に時期に移ります。この2つの成長期を分けるのが、Véraison(色付き)の時期です。
ブドウ樹の生育には水分が必須であるが、ヴェレゾン期を過ぎても多くの水分がある場合は、樹の栄養生長が止まらず生殖生長への移行がうまく行きません。その結果、ブドウの樹体の生長に栄養がとられるため、果実に十分な養分が行き渡らず、熟した果実が得られなくなります。また過度の湿度は各種病害の進行を早めてしまいます。ブドウの成長期である初夏から秋までの降水量が少なく、年間降水量500mm~900mmが望ましいとされています。
ブドウ栽培において、降雨は天の恵みにもなり、災いともなります。
生育期前期には十分な降雨が望ましく、水分が栄養生長(Végétation)を促します。しかし、開花期、結実後、収穫期の過度の降雨はブドウ果の成熟に好ましくない影響を与えます。
ブドウ樹は地中の根から樹体に水分を供給するので、水分の取り込みは、降雨量だけでなく土壌の保水性と関連しています。傾斜地では、土壌に浸み込んだ水分は不透水層に沿って下方に流れてブドウ畑の外に排出されるため、降水量だけでブドウへの影響を論じることはできません。
④土壌
土壌はブドウの生育に必要な水分と窒素分やミネラル等の栄養分を供給し、ブドウ果の品質を左右します。特に水分については、生育期間中で必要な時期にブドウ樹に水分を供給し、ヴェレゾン期になると地下水位が下がるなどで水分供給が止まるような物理特性を有する土壌が良いです。土質に注目すれば、保水性を保ちながら排水性の良い団粒構造を持った状態が望ましいといわれています。また、土壌は粘着性やさらさらした状態など物性に差がありますが、この差は土壌の構成粒子の大きさ(粒径)が大きな要素となります。土壌は、粘土質、砂質、礫質と呼ばれ、国際的な取り決めによる分類では、粒径0.002mm以下を粘土、0.002~0.02mmをシルト、0.02~2.0mmを砂、2.0mm以上を礫と呼んでいます。
ブドウ樹に限らず、栽培植物は窒素やリン、カリウムなどのミネラル成分や各種微量要素が必要で、いずれかの成分が突出することなく、バランスが取れていることが大事です。ブドウ栽培には痩せた砂利、礫質土壌が適しているといわれていますが、これは窒素などの養分が不要ということではありません。このような土壌では、ブドウ樹の生育が抑えられ、各種ストレスがかかるため、ブドウが果実を充実させることがであります。また、土壌には各種ミネラルや栄養分を保持する能力として、CEC(陽イオン交換容量)という指数があります。これは土壌に含まれる粘土や腐植が、マイナスに荷電しているためで、この電荷がミネラルや栄養分を保持しています。CECは簡単に計測できるので、土壌の保肥能力を把握するための大切な指標となります。
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