ビール ー上面発酵、下面発酵ー

ビール

ビール造りにおける発酵は、「上面発酵」「下面発酵」「自然発酵」の3種類に分類することができます。「発酵」とは、酵母菌などの微生物が糖質をアルコールと炭酸ガスに分解することです。ほとんどのビールは、「上面発酵」「下面発酵」のどちらかで造られています。「自然発酵」で造られているはベルギーのランビックが有名です。

上面発酵ビールは、古くからのビールの造り方。
発酵が進むと麦汁の上部に酵母が浮き上がる性質の酵母を使ったビールです。
常温〜やや高温の15~20℃くらいで発酵し、発酵期間は3〜4日。(その後の熟成期間は約2週間) 
フルーティーな香りのもとであるエステルなどを多く作り出します。
ペールエール、スタウト、アルト、ヴァイツェンといったビールが上面発酵酵母を使って醸造されています。
この上面発酵酵母で作られたビールを総称して「エールビール」と呼ぶことから「エール酵母」とも呼ばれています。

一方、下面発酵ビールは、中世以降に始まり、19世紀以降、世界的に主流となりました。 下面発酵(ラガー)は低温で発酵が行われるため、雑菌が繁殖しにくく製造管理がしやすいといったメリットがあり、一定の品質を保ったビールを大量生産するのに向いていたからです。
上面発酵酵母とは逆に、発酵が進むにつれて、タンクの底の方に沈降していく酵母を使って醸造されています。
5~10℃くらいの低温で発酵し、発酵期間は7〜10日。(熟成期間は約1ヶ月)
香味成分は多く発生しませんが、キレのある爽やかなノド越しを作り出します。
日本のビールのほとんどは下面発酵酵母を使用しています。
下面発酵ビールは「ラガービール」と呼ばれることから、この酵母は「ラガー酵母」とも呼ばれています。
このように、上部に酵母が浮き上がるか、下に沈殿していくかと、発酵する温度に大きな違いがあります。上面発酵であるエールビールは、高温でも発酵できるため、冷凍機がなかった時代にも作られていました。19世紀に入ると、冷凍機が発明されたため、国を選ばなくても下面発酵のラガービールが造られるようになったのです。つまり、エールビールは伝統的な製法で造られていたということです。

自然発酵ビールは、 培養されていない野生酵母を使った造り方。今では数多くは造られていない。代表的なものはベルギーの「ランビック」という種類(スタイル)のビール。日本では岩手県のブリュワリー「いわて蔵ビール」が造っています。
私たちがよく目にする大手ビールメーカーのビールは、ほとんどがこのラガーの「ピルスナー」という種類(スタイル)のもの。世界で最も普及しているビールがこの「ピルスナー」なのです。 
しかし、ラガーが世界的に普及した後も、イギリスやベルギーではエールが好まれてきました。のどごしが良くすっきり爽快、ゴクゴク飲めるのが特徴であるラガーに対し、エールには芳醇で濃厚な味わいと飲み応えがあります。
クラフトビールの定義について見ていくと、アメリカではクラフトビールの醸造所は小規模であり、独立していることを定義としています。日本では決まりはないため、大手のビール会社がこだわってクラフトビールを造ることもあります。
そしてクラフトビールはエールビールが多いです。
理由はコストが少なくて環境を問わないためです。
上面発酵は、比較的高温で発酵させる製法です。冷やす必要がないため、どんな地域でも作ることができたのです。手軽に低コストでも作られることから、小規模の醸造所でも作ることができたのでしょう。エールビールが作りやすかったことがわかります。下面発酵であれば、温度を低く保つ必要があり、そのための設備が必要になります。つまり、コストがかかるのは下面発酵と言えます。

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