ブドウは、ブドウ科ブドウ属に分類されるつる性落葉果樹です。つる性果樹なので、どのような形にも仕立てることができます。
ブドウ樹の仕立て方は世界各地で異なっています。
礫質で水分の少ない乾燥地帯では、土壌が養分を保持できないため、小さく仕立てることが多いです。
風の強い地域では、常に植物が風に動かされるので、ブドウ樹は大きくならず、小木となる傾向があります。
降雨が多く粘土質の地域では、樹の勢いが強く、枝や葉の方に栄養が回ってしまい、果実の品質が低下し、凝縮度のあるワインになりません。
このようにそれぞれの土地の自然環境やブドウ品種の性質、歴史的背景、収穫量の多寡、生産するワインのスタイルに従い、休眠期に剪定(Taille)することでブドウ樹の形を整えます。
まず、古い枝や成長を妨げる枝など、不要な枝は切ります。残した枝についても樹勢を抑えるために、先端を切り詰めます。
枝を切り詰める長さは品種によって多少異なり、樹勢の強い「巨峰」や「ピオーネ」などは結果母枝に7~8芽残して選定し(長梢剪定)、受精の弱い「デラウエア」や「マスカットベリーA」などは2~3芽残して剪定します(短梢剪定)。剪定は、芽と芽の間で切り、1m2当たり2~3本の枝を残すようにします。剪定により芽の数が決まり、大まかな収穫量が決まるため、ブドウ樹の状態をよく観察し、一本一本のブドウの樹勢にあった芽数にすることが非常に大切であります。
剪定が終了したら、バランスを見ながら、棚や垣根に誘引します。
剪定後の切り口及び傷口の癒合促進には、殺菌剤を剪定整枝時の枝の切り口に塗布します。
ブドウの仕立て方には、垣根仕立て、棒仕立て、株仕立て、棚仕立てなどがあります。
①垣根仕立て
世界的に最も広くワイン用ブドウの仕立て方で、垣根のように平べったく仕立てています。主な地域はボルドー、ブルゴーニュ、ドイツ、イタリアなどですが、近年はほとんどの国で採用されています。
針金を柱を用いて結果枝(実がなる枝)を地面と垂直方向に伸ばす仕立てで、長梢剪定と短梢剪定に分けられます。
長梢剪定として広く用いられるものに、19世紀にフランスの植物学者のJules Guyot博士が広めたギヨ式剪定法があります。
Guyot Simple
長梢(仏 cot、courson)1本と短梢(仏 aste、latte)1本からなり、左右片側に長梢を誘引。翌年の長梢は、当年の短梢からとります。
Guyot Double
前年の結果枝のうち、主幹(仏 tronc)に近い充実した枝を、結果母枝として、左右それぞれ短梢1本と長梢1本残し、長梢を左右に広げて水平に誘引。単勝から充実した枝が伸びるため、翌年の長梢は、当年の短梢からとります。
短梢剪定として広く用いられるものとしては、「コルドン・ロワイヤ(仏 Cordon Royat)」があります。これは、ギヨ式剪定法で長梢から伸びた結果枝を、それぞれ2芽の短梢として残す方法で、それ以降は毎年短梢から伸びた結果枝を2芽の短梢に剪定します。左右両方に伸ばす場合が多いですが、片側だけのこともあります。誘引の手間がなく、短梢からは比較的充実した枝が伸びるため、比較的簡単な剪定法ですが、短梢の基部がだんだん膨らんでくるため、何年かに一度は主管に近い位置で切り出しを行い、長梢剪定をして樹形を整える必要があります。
他に、左右に弧状にとった長梢2本と2~3本の短梢を残すボーゲンなど各地の自然条件に合わせた垣根仕立てがあります。
②棒仕立て
主な地域はモーゼル、北部ローヌなど
針金で垣根を張ることができない急斜面に適しています。
畑を栽培者が上下左右に動きやすうような仕立て方が取られています。左右から2本の長梢をとり、主幹に添えた棒を中央にハート型になるように縛り付けます。
③棒仕立て(仏 Gobelet)
主な地域は南フランス、スペイン、ポルトガルなど
長梢選定をすることもあるが、主幹上部に短梢を数本残す場合が多い。新梢を針金や棒に固定しないため、結果枝は過剰な伸長をせず、乾燥地で多く使われています。
④棚仕立て(仏 Pergola)
降雨の多い日本や、日差しの強いイタリア、ポルトガルの一部、エジプトなどでこの仕立てが採用されています。植栽密度が低いことが多く、樹体は比較的大きくなります。この仕立て方は、ブドウが棚の天面に広がるため、地面に対して水平に歯が広がります。またブドウ果実が目の高さになることできめ細かい手入れが可能になり、生食用部度に適用されることが多いです。
コメント