ワイン概論 ーブドウ品種ー

ワイン

ブドウ品種


ブドウは、ブドウ科(Vitaceae)のブドウ属(Vitis)に属する、冬季落葉性のつる性植物です。
中近東が原産のV.viniferaヴィティス・ヴィニエラはワイン醸造に適しており、フィロキセラ耐性をほとんど持たない。また乾燥した気候に適しており、雨が多い気候には弱い。
北米大陸を原産とするV.labruscaヴィティス・ラブルスカは湿った気候に適しており、耐病性も強い。またFoxy flavorフォキシー・フレーバーと呼ばれる独特の香りを持つ。
東アジア種群として、V.amurensisヴィティス・アムレンシス
日本で自生する山ブドウであるV.coignetiaeヴィティス・コワニティなどがあります。
この他にヴィニフェラ種とラブルスカ種の交雑品種として、デラウェアや巨峰、マスカット・ベリーAなどがあります。
なお、同じ種を掛け合わせることを交配、異なる種を掛け合わせることを交雑と呼びます。

ワイン用ブドウ

ブドウはワインを作るためのほぼ唯一の原料であり、ブドウの品質がワインの品質の良し悪しをあらかた決定するといっても過言ではありません。「ワインのブドウは美味しくないのではないのか」と思われがちですが、とんでもありません。食用ブドウに比べ、醸造用ブドウは甘味がとても強く、酸味が十分にあるリッチで濃厚な味わい。もとの成分がリッチだからこそ、複雑で味わい深いワインができるのです。
食用ブドウと醸造用ブドウは、水分の量、糖度および酸の濃度、渋みの量に違いがあります。
食用ブドウはみずみずしさと食べやすさを基準に改良されています。そのため、水分量が多くて酸味は控えめになっています。また、果皮が薄いのが特徴です。
醸造用ブドウは水分量に比べて糖度と酸味が強い。また、果皮が熱く種も多いので、渋みにも富んでいます。

赤ワイン用ブドウの種類

赤ワインには、基本的に果皮が濃い紫色をした黒ブドウを使用します。赤ワインの最大の特徴である色と渋みは、ブドウの果皮にあるアントシアニンや種子のタンニンなどです。これらの成分の含有量は、ブドウ品種や産地、収穫年、ブドウ果実の成熟度合いによって異なります。
色素や渋味成分であるポリフェノール類は、ブドウ果実が成熟するにつれて含有量が増えますが、気温が低い場合や逆に高すぎる場合は、果実の中でのポリフェノール類の生成がブロックされてしまいます。また、ポリフェノール類が溶解されやすい状態であることも重要です。
黒ブドウの収穫タイミングは糖や酸の量のほかにポリフェノール類の量と溶解されやすさを分析して決定しますが、最終的には試食をして決めます。

カベルネ・ソーヴィニョン Cabernet Sauvignon
フランスボルドー地方原産の代表的ブドウ品種。
若いワインにはカシスやブルーベリーなど黒系果実の力強い香りがあり、しっかりとした酸や渋味を感じる。冷涼な地域や未熟果から造られたワインにはピーマンのような青い香りが出やすい。また、樽熟成によりモカやカカオの香りがプラスされる。熟成すると葉巻や皮革、甘草などの香りが現れ、渋味が和らぐとともに旨みが増す。
カベルネ・ソーヴィニョンの親はソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・フランです。

ピノ・ノワール Pinot Noir
フランスブルゴーニュ地方を代表するブドウ品種で南北アメリカ、ニュージーランドなどでも栽培されており、比較的冷涼で乾燥した気候を好む。果皮が薄いため、色調はやや淡く渋みは少ない。産地によって香りの質が違うが、一般的にイチゴやチェリーなどの赤系果実の風味やバラの香りがあり、熟成するとキノコや皮革、紅茶などの香りが現れる。

メルロー Merlot
ボルドーのサンテミリオン地区をはじめ、世界中で広く栽培されているブドウ品種で、保水性のある粘土質土壌を好む。ラズベリーやチェリーなどの赤系果実の香りがあり、カベルネ・ソーヴィニョンに比べて酸味や渋味は穏やか、熟成するとトリュフや土、プルーンのような香りが現れ、まろやかでふくよかな味わいになる。

シラー Syrah
温暖で乾燥したローヌ地方を中心に、オーストラリアや南アフリカではシラーズの名で栽培されている。可否に含まれる色素が多いためワインの色調は濃い紫を帯びたガーネット色。渋みも比較的多い。カシスのような黒系果実の香りとスパイシーな風味を持ち、熟成するとムスクや土の香りが加わり複雑でエレガントな味わいになる。

カベルネ・フラン Cabernet Franc
カベルネ・ソーヴィニョンの親に相当する品種で、主にロワールやボルドーで栽培され、メルローとブレンドされることもある。すみれやチェリーの香りを持ち、渋みはあるが強すぎず繊細な味わい、未熟な場合や冷涼な地域では、ピーマンのような香りが出ることもある。熟成するとムスクや葉巻のような風味が加わる。

ネッビオーロ Nebbiolo
イタリアの代表品種で、アルカリ性土壌で寒暖差が厳しいピエモンテ州以外では栽培が難しい。しっかりとした渋みとコクがあるが、ブラックチェリーのような果実味とフローラルな香りを持つ。長期熟成により旨味が増し、トリュフや土、皮革などの香りが現れる。

テンプラニーリョ Tempranillo
早熟という意味を持つスペインの代表品種で、やや冷涼な気候を好むため、標高の高いリオハ地区で成功している。近年ではフランスのラングドック地方やポルトガルでも栽培されています。酸味は穏やかだが渋みはしっかりとあり、ベリーの果実や皮革の香りを持つ。樽香との相性がよく、樽熟成により甘味のあるスパイシーな風味が生まれる。

グルナッシュ・ノワール Grenache Nior
スペイン原産で南フランスやローヌ地方でも栽培されている。スペインではガルナッチャと呼ばれる。ブラックベリーや完熟チェリーの果実味に、甘草のスパイシーな風味があり、渋味と酸味はあまり強くない。熟成するとアプリコットや狩猟肉の香りが現れる。

カルメネール Carménère
かつてはフランスのボルドー地方で栽培されていたが、現在ではほとんで栽培されていません。この品種の世界最大の栽培地域はチリです。豊かな果実味とコクのある味わいのワインで注目を集めています。

ガメイ Gamay
ブルゴーニュ地方南部およびロワール地方でおもに栽培されており、ボージョレを造るブドウ品種として有名。フレッシュなイチゴのような果実味と、すみれやバラの花の香りがある。渋みは少なく軽やかな味わいで、比較的若いうちに飲まれる。

サンジョヴェーゼ Sangiovese
「キャンティ」のワインを造る品種として有名で、イタリア・トスカーナ地方をはじめ、カリフォルニア州でも栽培されている。イチゴやプラム、すみれの花の香りがあり、酸は高めで渋味は中程度。若いうちは明るい味わいだが熟成するとエレガントになるものもある。

プティ・ヴェルド Petit Verdot
おもにボルドーのメドック地区で栽培されており、カベルネやメルローなどにブレンドする補助品種として使われる。完熟するのは数年に一度と言われており、ブラックベリーや鉛筆の芯のような風味を持つ。完熟するとマンゴーの風味が出ることがある。

マルベック Malbec
フランス南西部やボルドー、アルゼンチンなどで栽培されている。担任が非常に豊富なため「黒ワイン」とも表現されるほど色調の濃いワインができる。プラムやカシスの果実味やアニスのようなスパイシーさを持ち、渋味が強くリッチで肉厚な味わい。

ムールヴェードル Mourvèdre
南フランスやオーストラリアなどでも栽培されているスペイン原産の品種。語源は「死体の香り」だが、実際はブルーベリーの風味やシナモン、クローヴ、甘草などのスパイシーな香り、そして僅かに動物的な香りを持つ。アルコール分が高く、ほどよく渋味がある。

ジンファンデル Zinfandel
カリフォルニア州を代表するブドウ品種で、イタリアではプリミティーヴォと呼ばれる。赤ワインはもちろんのこと、ホワイト・ジンファンデルという名でロゼワインも造られる。渋味は少なく、梅やクランベリーのような軽やかな風味とスパイス香と持つ。

ピノ・タージュ Pinotage
ピノ・ノワールとサンソーを交配した南アフリカの固有品種で、ボージョレのような軽やかなワインから、ローヌ地方のようなリッチな味わいまで幅広いタイプのワインを造れる。コーヒーやチョコレート、あるいは土やスパイスのような力強い風味を持つ。

バルベーラ Barbera
おもに北イタリアとカリフォルニア州で栽培されているイタリア産の品種。色調は濃く、比較的暑い場所で育った場合でもしっかりとした酸味がある。完熟のカシスやブラックベリーの果実味があり、樽熟成するとバニラの風味やスモーキーな香りが加わる。

マスカット・ベリーA Muscat Berry A
1927年(昭和2年)、川上善兵衛により交配された日本固有の生食、醸造兼用品種。
キャンディのような甘い香りが特徴で、優しい口当たりとなめらかな味わいの果実味のある赤ワインになります。

白ワイン用ブドウの種類

白ワイン用のブドウは、主として果皮の色が薄い白ぶどうを使用しますが、まれに黒ぶどうの果汁のみを使用することもあります。
白ブドウはポリフェノール類の含有量が少ないため、もともと渋みが少ないのが特徴です。また、白ブドウは赤い色素のアントシアニンをほとんど含まないため、フラボノイド色素が発色する黄色みを帯びた色調になります。
辛口白ワインの味わいの最大の特徴は酸味なので、ブドウ果実が成熟するにつれて減少するゆきさんの含有量に注意しながら収穫を待ちます。また、完熟を過ぎると香気成分も減少し、フレッシュ感が損なわれるのでその点にも留意します。糖と同様に、香気成分も日中んお暑い時間よりも夜間の涼しい時間に蓄えられるので、早朝収穫がベストです。

シャルドネ Chardonnay
ブルゴーニュをはじめ、南北アメリカやオーストラリアなど世界中で栽培されている「白ブドウの女王」。小雨とミネラル分の多い土壌を好み、とくに石灰質土壌では高品質になる。突出した特徴香はないが機構や土壌の個性を反映しやすく、また収穫時期や醸造方法、さらに樽の使用によって味わいに変化が出やすい変幻自在の品種。
冷涼な地域ではレモンなどの柑橘類や青りんごなどの果実味があり、すっきりとした上品な酸味が際立つ。温暖な地域では桃やパイナップルのような甘い香りのある果実味が出やすいく、酸味は穏やかでまろやかさが強調される傾向にある。樽熟成によりナッツやバターの香りが現れ、また長期熟成すると複雑でリッチな香りに満たされる。

ソーヴィニョン・ブラン Sauvignon Blanc
ロワールやボルドー、ニュージーランド、カリフォルニアなど世界中で栽培されている。特徴である青さを感じるフレッシュな香りの成分は果皮に多く含まれるため、発酵前に果皮を漬け込んで香りを引き出す醸造法がある。セミヨンとブレンドするボルドーを除き、爽やかな香りと酸味を生かして単一品種でワインが造られることが多い。
ハーブやグレープフルーツのような爽やかな香りが特徴で、すっきりとした酸味とほろ苦さを持つ。ロワールなどの冷涼な地域ではこの品種の魅力である青々とした風味がより発揮されやすい。フレッシュ感を楽しむため、若いうちに飲むことが多い。温暖な地域のものは樽熟成することがあるが、強すぎる樽香との相性は悪い。

リースリング Riesling
ドイツを代表する品種で、アルザスやオーストリア、オーストラリアでも栽培される。冷涼な気候を好み、シャープな酸味とミネラル感のある味わいが特徴。若いワインはリンゴやアプリコットの果実味があり、熟成するとハチミツや石油の香りが現れる。収穫時期や醸造法により、辛口から甘口ワインまで幅広く造られる。

シュナン・ブラン Chenin Blanc
ロワールや南アフリカで栽培されている品種で、とくに石灰質土壌を好む。爽やかな辛口から極甘口の貴腐ワインまでと造られるワインのタイプは多彩。アカシアの花やハーブの芳香、そしてメロンのような甘い香りを持ち、引き締まった酸味がある。熟成するとよりリッチな香りになり、複雑な味わいに変化する。

セミヨン Semillon
ボルドーやオーストラリアで栽培され、ソーヴィニヨン・ブランとブレンドされることが多い。辛口ワインも造られるが、果皮が薄くて貴腐菌がつきやすいため、貴腐ワインを造る品種として有名。ハチミツやアプリコットの香りがあり、穏やかな酸味がある。

ゲヴュルツトラミネール Grwürztraminer
「スパイス」という意味を持つとてもアロマティックな品種で、アルザスやドイツ、イタリアなどで栽培される。ライチや桃、アプリコットなどの甘い香りと牡丹やバラの花の芳香を持つ。もともと酸が豊富なため、遅摘みや貴腐化させてから収穫することも多い。

ミュスカ Muscat
いわゆるマスカット系統のブドウで、辛口から甘口ワインまで造られる。保水力のある土壌を好み、アルザス地方や南フランス、ドイツ、イタリアなどで栽培される。バラやアカシアの花、オレンジ、メロン、ハチミツなどの華やかな香りがあり、味わいはジューシー。

ピノ・グリ Pin Gris
アルザスやイタリアで栽培される白ワイン用品種で、その名前は赤みを帯びた灰色(グリ)の果皮に由来する。完熟すると酸味が急激に和らぐため味わいに丸みがあり、桃やナッツのやわらかい香りとスモーキーな風味を持つ。イタリア名はピノ・グリージョ。

ピノ・ブラン Pinot Blanc
ピノ・ノワールの突然変異であるピノ・グリがさらに変異してできた品種で、酸味が多く香りは淡い。アルザスなど冷涼な地域で栽培され、軽やかな辛口ワインや発泡性ワインを造る。ドイツではヴァイサーブルグンダー、イタリアではピノ・ビアンコと呼ばれている。

ヴィオニエ Viognier
ローヌ地方をはじめ、南フランスやオーストラリアなどで栽培される。アロマティックな品種でアカシアやオレンジの花の香りがする。マンゴーやパイナップルなどのエキゾチックな果実味があり、酸味は穏やかでクリーミーな味わいで、辛口ワインを造る。

グリューナー・ヴェルトリーナー Grüner Veltliner
オーストリアの固有品種で、以前は大量生産のための品種だったが、最近は高品質なワインを造る方向へシフトしている。早めに収穫すると爽やかな柑橘系の香りが立ち、完熟させると桃の甘い香りが出る。クリーンな酸味と白こしょうの香りが特徴。

ミュスカデ Muscadet
ロワールで栽培される白ブドウ品種で、酸味は穏やか。干草や青りんご、柑橘類などの淡い香りがあるが、個性は弱くニュートラルな印象である。ワインを澱と共に熟成させる「シュール・リー」という製法を用いて味わいに香りとコクを出すことが多い

ユニ・ブラン Ugni Blanc
ブランデーの原料品種として使われることが多いが、ほかの品種とブレンドして辛口白ワインも造られる。おもに南フランスやイタリアなどで栽培されており、イタリア名はトレッビアーノ。香りと酸味が弱く、ニュートラルな印象だが、すっきりとしたみずみずしい味わい。

アルバリーニョ Albariño
スペイン北西部の沿岸やポルトガルで栽培され、香り豊かな辛口白ワインを造る。アーモンドや桃、リンゴの香りがあり、シャープな酸味を持つ。熟成すると香りが飛び出しやすく、味わいがぼやけるので、フレッシュな味わいが支配する若いうちに飲むのがベスト。

甲州 Koshu
果粒も房も大振りな山梨県特有のブドウ品種だが、そのルーツはヨーロッパにあり、シルクロードを使って伝来したといわれている。果皮は赤みを帯びているが、白ワイン用品種として使われる。香りと酸味は淡く、みずみずしい味わいに仕上がる。

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