ワイン概論 ーワインとはー

ワイン

日本の酒税法では「15℃においてアルコール分1度以上(薄めて1度以上の飲料とできるものまたは溶解して1度以上の飲料とできる粉末状のものも含む。)の飲料」を種類と定義している。
日本の酒税法では種類を発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類に大別している。
ワインは果実を原料とした醸造酒に分類されるが、ワインにはスパークリングワイン、フォーティファイドワイン、フレーヴァードワイン、混成酒(ヴェルモット)などいろいろな種類があります。

ワインとは

ワインとはブドウ果実を原料として醸造した種類をいいます。
ブドウはそのままでも発酵可能は糖分を含んでいるため、穀物を原料とする酒類と異なり、でんぷんを糖分に糖化する工程は必要ないため、原料となるブドウの性質を色濃く反映することとなります。

ワインの特性
①ワインは自然なもの
ワインはブドウの果汁の中の糖分を公募のアルコール発酵によってエチルアルコールに変えた飲料です。
アルコール発酵の化学式を提唱した人物は
Joseph Louis Gay-Lussacジョセフ・ルイ・ゲイリュサック(1778-1850)で
化学式は
C6H12O6ブドウ糖、果糖2C2H5OHエチルアルコール + 2CO2二酸化炭素
酵母による発酵メカニズムを解明した人物は
Louis Pasteurルイ・パストゥール(1822-1895)です。
1kgのブドウから搾汁される果汁、ワイン(赤ワイン)の量は、600㎖~800㎖。
ワインはブドウ果実に含まれる糖分を直接発酵させるので、穀物を原料とする日本酒やビールと異なり、基本的に醸造の際に「仕込み水」として水を用いることはありません。それだけに原料になるブドウの品質がそのままワインの品質となってあらわれます。「良いワインは良いブドウから」生まれるのです。そして良いブドウの品質は、ブドウの品種、原産地、その年の気候など自然条件が決定するので、ワインに対する自然条件(産地の土壌、地形、日照、気温、雨量、ブドウ品種など)の影響が、ほかの酒では考えられないほど大きいのもそのためであります、生鮮果実がそのまま酒になったもの、それがワインと言ってもいいです。
②ワインの酸味は独自のもの、赤ワインの渋味も独自のもの
ブドウは種々の有機酸を多量に含み酸味を呈し、その酸味はワインに移行します。
つまりワインは本質的にブドウの酸味を基調とした酒として生まれてくるのであります。
[ワイン中の主な有機酸]
(ブドウに由来する酸)
酒石酸 1.5~4.0g/ℓ
リンゴ酸 0~4.0
クエン酸 0~0.5
(発酵によって生成した酸)
コハク酸 0.5~1.5g/ℓ
乳酸 0.1~3.0
酢酸 0.1~0.8
さらにこれらの有機酸以外にもワイン中にはグルコン酸やガラクチュロン酸などの数多くの存在が報告されています。
ガラクチュロン酸は貴腐ワインの熟成中に酸化され粘液酸となり、さらにカルシウム塩となって白色結晶の粘液酸カルシウムとして析出。またワイン中で析出する酒石は酒石酸とカリウムなどが結合した物質で、キラキラと輝く様子はワインの宝石という人もいます。
赤ワインの場合は、この酒石結晶も赤紫色に着色している場合が多いです。なお、粘液酸カルシウムも酒石結晶も無害です。
こうした有機酸類がワインの飲み口の爽やかさや後味の切れの良さとなっており、料理の味を盛り上げるうえでも大きな要素のなっています。また赤ワインに含まれるタンニンは、赤ワインの渋味や味の幅の要素となっています。ワインの持つ酸味や渋味の多さは、ほかの飲み物にはない独自の楽しみを与えてくれます。
③ワインは風味のヴァラエティ豊かな酒である。
ワインの風味は香りと味に分けられます。
香りはアロマとブーケに、アロマはさらに第1アロマと第2アロマに細別される。
第1アロマは原料ブドウ由来の品種特性香です。なお、ブドウ果実の香りそのものがワインに移行するのはマスカット系ブドウやゲヴュルツトラミネールなどに限られ、発酵工程を経てワインになったときに感知される品種特有の香り(例えばソーヴィニヨン・ブラン)も含めて第1アロマといいます。
第2アロマは発酵工程で酵母や乳酸菌が生成する香りをいいます。
ブーケは第3アロマともいわれ、発酵終了後、タンクまたは樽で貯蔵中に生成する熟成香と、さらに瓶詰後に瓶中で生成する熟成香のことをいいます。
このようにワインの香りは多種多様であり、極めて多彩な風味を有する酒類であります。
同時にその味わいは有機酸類、ポリフェノール類、アルコール類、糖類など多くの成分の複雑な関係から生み出され、ワインの風味の幅を一層広く奥深いものとしております。
④ワインは健康的なお酒
ブドウが原料のワインはミネラル分、主にカリウム、カルシウムを多く含み、野菜や果実のミネラル分と同じように、美容や健康に与える効果が大きいといわれています。なお、ワインは有機酸含有量がほかの種類よりも多いため、ワインそのものは一般に2.9~3.6というpHを示しますが、ワインを飲用すると有機酸は体内で容易に代謝される結果、血液等のpHとは無関係となります。
ワインの中には、水分のほかに、アルコール類や各種有機酸、残糖分、エステル類などの芳香を有する物質、フェノール化合物、アミノ酸類、タンパク質、ミネラル分など身体の健康維持に必要な栄養・エネルギーの補給源や予防医学の面から意義のある成分が多く含まれています。
赤ワインの効果として心疾患による死亡率が低いという、いわゆる”フレンチ・パラドックス”が話題にとなりました。動脈硬化症の発症要因としては、LDL(Low Density Lipoprotein=低密度リポ蛋白)が血管に付着して起こるといわれてきましたが、近年の研究により、LDLそのままではその原因とならず、活性酸素のようなもので酸化されると動脈硬化を招くことが明らかになってきました。コレステロールが高いだけでは動脈硬化になるとは限りません。生体にとって、活性酸素を生体で消去する力を植物由来のポリフェノールやフラボノイドはもっています。
活性酸素消去能すなわち抗酸化能が高いポリフェノールはブドウの果皮、種に多く含まれるので、赤ワインにその含有量が多くなります。品種で見るとカベルネ・ソーヴィニョン、ネッビオーロの活性酸素消去能が高く、テンプラニーリョ、カベルネ・フラン、ピノノワール、メルローが中間のグループで、ガメイは低いです。白ワインはポリフェノール含有が低く、消去能も低いという報告があります。また、酸化抑制作用とともに血小板凝集抑制作用による血栓症のリスク減少についても報告されています。
赤ワインにはもう一つよい成分があり、ポリフェノールの一種であるResveratrolリスベラトロールです。ブドウがカビに汚染されると自分を守るために作るファイトアレキシンと言われる物質の一種で、抗カビ活性があり、果実に存在します。1992年にワイン中に存在が確認され、LDLの酸化を防止し、血小板凝集を抑制し、血栓症を予防することが報告されています。
白ワインについても、赤ワインに含まれるポリフェノールより、そのポリフェノールの方がLDLの抗酸化能が高いという報告や、血小板凝集抑制に関しては白ワインの方が効いたというデータもあります。
また白ワインにはカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルがバランスよく含まれており、利尿作用があります。白ワインには酒石酸、リンゴ酸など約0.5%もの有機酸が含まれ、食欲増進効果があり、腸内細菌群のバランスを整える作用もあります。大腸菌やサルモネラ菌に対する抗菌力が高く即効性があり、その効果は赤ワインより高くなっています。
⑤ワインのアルコール代謝
ワインに含まれるアルコールは、そのほとんどが肝臓でアルコール分解酵素などによりアセトアルデヒドに代謝される。アセトアルデヒドはアルデヒド分解酵素により酢酸(お酢)となって体外に排出されます。アセトアルデヒドは発がん性のある毒物であり、体を錆びさせる活性酸素種を作り出しアルコールの健康被害の主原因となっています。日本人の半数はアルデヒド分解酵素が遺伝的に弱いので、少量のアルコールでも体内の濃度が上がりやすく、このタイプの方が長期にわたって、例えば1日に1本以上のワインを大量飲酒すると、多種類のガンやアルツハイマー病などの神経障害のリスクや酸化による老化を早めるので大量飲酒は避けるべきであります。

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